「南アフリカの山事情について」

(AACK時報No.12, 1994年9月に掲載)

私は丸紅(株)の駐在員として、1987年4月より1993年5月まで、6年間南アフリカ共和国のヨハネスブルグに住み、南アでの山登りを楽しんできました。この間、南ア山岳会、ルーデポート・ハイキングクラブ、ヨハネスブルグ・ハイキングクラブに所属し、トランスバール州とナタール州の山々を登ってきました。特にナタール州に有るドラッケンズバーグ(Drakennsbur)山脈には、片道5−8時間かけて車で走り、6年間で42回通いました。
ドラッケンズバーグ山脈は、レソト立憲君主国を「コ」の字型に囲むように、約250kmも連なる3,000m級の大山脈です。ヨハネスブルグから登りに行く場合は、通常ナタール州側から取っつきますが、稜線から500-800mは大岩壁の障壁がナタール側になぎ落ちており、稜線へは急峻なガリーを使っての登攀となります。
ドラッケンズバーグは、Dragons Mountain「龍の山」の意で、夏場の12-3月は強烈な雷と雨の多い山脈です。冬場の6-9月は積雪量は少ないですが、零下10-20Cに下がることも珍しくありません。
ドラッケンズバーグの稜線には山小屋は殆どなく、また登山道標も完備しておらず、本当に静かな自然のままの山として残っています。明治時代の北アルプスもかくありなんと想像されるような「私だけの山」を楽しむことができました。
南ア山岳会は、1991年に創立100周年を迎え、私も日本山岳会の山田二郎会長の代理として記念パーテイに出席してきました。
南アフリカ政府ののアパルトヘイト政策に対する制裁として、世界各国が南アに対して経済制裁とスポーツ・文化交流を禁止していましたが、1992年に、それも解除され南ア山岳会も各国の山岳会、山岳団体との交流の仲間入りをすることが可能になりました。
ドラッケンズバーグには、未踏の岩壁が数多く残されています。南ア山岳会では、日本の登山家の来アを大歓迎しています。
南アでの登山に興味ある方には、南ア山岳会の友人を紹介しますので、遠慮なくお申し出下さい。