憧れのジョン・ミュア・トレイル(アメリカ)

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日程 : 2003年8月3日ー27日

8月3日に日本を出発して、米国シェラネバダ山脈のジョン・ミュアー・トレイルを歩いてきました。同行者は、京大山岳部1960年同期入部の堀内コンゴさん、京都山岳会の宮川清明さん、山城高校山岳部同級生の八太幸行さんと私の63歳の同年生4人。

ジョン・ミュアー・トレイルは、シェラネバダの自然を愛し、自然保護者の先駆者として米国の国立公園の設立を提唱した初代シエラクラブ会長のジョン・ミュアーを記念して作られたトレイルです。ヨセミテから米国最高峰のマウント・ホイットニー迄連なる340kmのロング・トレイルで、世界のバックパッカーの憧れのトレイルと言われています。
日本アルプスのように食事付きで泊めてくれるような山小屋は全く無く、すべての食糧とテントを担いでのワイルダネスの山旅となります。体力のない我々年寄り部隊は、ヨセミテより1/3程度の約120kmを11日間かけてゆっくり歩いてきました。それでも、ヨセミテを出発したときには、一人当たり23-24kgの荷物になりました。

ジョン・ミュアー・トレイルは、ピーク・ハンテイングが目的のトレイルではなく、シェラネバダ山脈の岩山に囲まれたエメラルド色の素晴らしく美しい湖と高山植物の咲き乱れるメドーを巡る実に楽しい山道です。峠を越えるたびに異なる景観が我々を陶酔させ、澄み切った水をたたえる湖や谷川には人ずれしないレインボー・トラウト、ブルック・トラウト、ブラウン・トラウトが入れ食いの状態で泳ぎ廻っていました。

人間はおそわないが、食糧をねらってテント場にやってくるブラック・ベアーが、シェラネバダ山脈のバックパッキングで一番の大敵です。我々も、カウンター・バランスで松の大木の枝につるして置いた食糧袋をおそう黒熊に遭遇しました。幸いと食糧袋に付けておいた、ネパールで買ったヤク用のベルが役立ち、真夜中にヤク・ベルの音に目ざまされて、ホイッスルを吹いたり、大声で怒鳴りながら小石を投げて、黒熊を撃退することが出来ました。

シェラネバダ山中の川・湖の水は、ジアルデイア・ランブリアと言う微生物がおり、そのまま飲むと人間の腸に取り付き、下痢、食欲不振や腹部の痙攣やむくみが出ると言われて
いるので、我々も忠告通り浄水器を使って水を濾過して飲料水としました。

雪の多い年は8月でも峠越えが大変と言われ、又谷川の渡渉が危険と言われているので、
我々も6本爪のアイゼンや、渡渉用の6mmロープやカラビナ、シュリンゲ等も用意していきましたが、今年は例年になく雪が少なかったのか、全く使用する機会はありませんでした。それにしても、シェラネバダの山々を歩いている11日間は、毎日紺碧の青空続きの晴天で、今回は雨具は一度も使用しませんでした。更に、精神的にもうんざりすると言われている蚊やブヨも悩まされることなく、持参したモスキート・ネットや蚊取り線香のお世話になることも全く無かったのは、幸運と言えましょう。

日本の縦走も楽しいですが、日本には無い雄大なスケールのシェラネバダ山脈のワイルダネスの山旅は、最高に楽しく素晴らしいものでした。又、私達が11日間歩いたシェラネバダの山々には、ビールの空き缶などは勿論の事キャンデイーの包装紙一つ落ちていない清潔な状態なのには感心させられました。ネパール・ヒマラヤやカラコルムの山旅も楽しいですが、それとは違った山旅の魅力がアメリカのシェラネバダに有る事を初めて知った旅でした。

「 行 程 記 録 」

8月3日 関空発/14:55、サンフランシスコ着/08:55。フィシャーマン・ワーフのYHに投宿。
8月4日 バークリーのREIにて、プリムス・ガスボンベ、ホワイト・ガソリン、蚊よけリペレント、無公害石鹸等購入。
8月5日 サンフランシスコよりマーセードにレンタカーにて移動。Y.H宿泊。
8月6日 マーセードよりバスにてヨセミテへ。予約なしで泊まれるクライマー用のサニーサイド・キャンプ場に宿泊。
8月7日 グレーシャーポイント、ヨセミテ滝、ハーフ・ドーム等見学。
8月8日 エルキャピタン、キャテイドラル、センテイネルの岩壁を巡り岩登りを眺める。
8月9日 ヨセミテを7:45出発し、いよいよジョン・ミュアー・トレイルへのバックパッキング。ネバダ滝までの急登も、それほど苦労なく登り切り、レッド・パインの森の中のリトル・ヨセミテにて幕営12:30。ベアー・ボックス有り。
8月10日 5:30リトルヨセミテ出発。マウント・ホイットニーから歩いて来たと言う50代と30代と思われる女性2名に出合う。今日で32日目で、ヨセミテ迄の全行程340kmを完踏すると喜びにあふれた笑顔が美しかった。12:30サンライズCSに幕営。ベアー・ボックス有り。
8月11日 5:30出発、エコーピークの下のメドーに咲き乱れる紫のルピナスの花に感激。10時を過ぎると直射日光が照りつけ、歩くペースがガクッと落ちる。12:50トルミュー・メドウのバックパッカー用キャンプサイトに設営。ベアー・ボックス有り。
8月12日 5:35出発。ライエル渓谷のメドーに幕営11:00。阪本魚釣りに出かけ、15-22cmのブルック・トラウト15匹、18cmブラウン・トラウト一匹の収穫。焚き火にて塩焼き。
8月13日 6:40出発。3,254mのドナヒュー峠を越える。岩山が360度に渡り連なる広大な風景。心配していたラッシュ・クリークの渡渉も飛び石づたいにわたれ一安心。シェラネバダで最も美しい湖と言われるサザラン・アイランド・レイクのほとりで幕営17:00。夜、カウンター・バランスの食糧袋をねらってブラック・ベアーが現れた。
8月14日 本日は休養日の予定だったが、余り快適なテント地でもなく且つ黒熊が心配なので、近くのルビー・レイク迄移動することにする。8:10出発、ルビー・レイク10:30。11:40コンゴ氏と下の谷へ鱒釣りに出かけ,15:05帰幕。
33cm, 32cm, 27cmのレインボー・トラウト3匹、18-27cmのブルック・トラウト6匹。新鮮な鱒の塩焼きは美味なり。緑の湖の快適なテント場だった。
8月15日 6:20出発、12:35グラデイズ・レイク着。小さな湖だが気持ちの良い幕営地。
8月16日 5:53出発、10:35レッド・メドー着。バックパッカー用のキャンプサイトに幕営。ベアー・ボックス有り。ここはキャンパー用に開発された場所で、シャトルバスも走っている。近くのレッドメドウ・リゾートへ食糧の買い出しに出かけた。近くの温泉から取り入れたホットシャワーが嬉しい。
8月17日 5:07出発、14:00ダッククリーク着。松林の中の快適なテント地に幕営。37cmレインボー・トラウト一匹、15-18cmブルック・トラウト5匹の釣果
8月18日 6:35出発、火山湖のダック・レイクへ登り、更に標高200m程登ってダック・パスを越えてマンモス・レイクの方へ下る。
美しいアロウヘッド・レイクのほとりに幕営。アロウヘッドと上流のスケルトン・レイクを結ぶ谷へ釣りに出かける。ブルック・トラウト18匹の塩焼きに堪能した。そろそろ鱒の塩焼きにも、みんな厭きてきたようだ。
8月19日 7:50出発、13:00マンモス:レイクのモーテルに投宿。マンモス・レイクはカリファオルニアで一番大きなスキー・リゾートと言われており、何でも高かった。モーテル一泊US$70.-(二人部屋)
8月20日 マンモス・レイクにて休養。コイン・ロンドリーにて洗濯したり昼寝したり。
8月21日 7:50発バスにてリノへ。シニア料金バス代US$18:50。リノ空港着11:45。
レンタカーを借り、アメリカで最も透明度が高いと言われるレイク・タホへ。タホ市のトラベル・ロッジに投宿。一泊US$100(二人部屋)。
8月22日 7:40出発、プレース・ヴィレの古い金鉱街を見学後、サクラメントのトラベル・ロッジに投宿13:30。サクラメント市内見学。
8月23日 7:40出発、サンフランシスコに入る前に、ミュアー・ウッズ・ナショナル・モニュメントを見学、ミル・ヴァリーの街を訪れた後フィシャーマン・ワーフのユースホステルに投宿。
8月24日 サンフランシスコ市内見学。
8月25日 サンフランシスコ市内見学。
8月26日 サンフランシスコ12:15発UA便で大阪へ。
8月27日 15:05関空着