エアロビクスの代表的な種目として、ジョギング(ゆっくり走ること)、ウオーキング(歩くこと、特に早歩きを指す)、泳ぐ、自転車をこぐ、クロスカントリースキーなどがある。これらの運動は、@強度が比較的低いこと、A長時間行えること、H運動様式が規則的であること、という共通点がある。
これらの中でも、施設や用具のいらないジョギングとウオーキングは最も身近な運動である。
以前はジョギングの人気が高かった。この道動は、健康な若い人にとってはよい運動になる。だが、心臓や血管、あるいは骨や関節にかなり大きな負担がかかるため、運動不足の者、身体の弱い者、肥満者、中高年者にとっては障害の発生や突然死の引き金となる危険性もある。
特に、19糾年にジョギングの教祖といわれたアメリカのJ.フィックス(52歳)が、ジョギングの最中に心筋梗塞で突然死するという衝撃的な事件があってからは、次第にウオーキングの方に人気が移り現在に至っている。
現在流行しているウオーキングは、ジョギングよりも身体への負担が小さく、誰でも安全にできるという点で優れている。ところがこの運動にも問題点がある。それは単調で 飽き易いということである。
ウオーキングに限らないが、低強度、長時間、規則的というエアロビクスの運動条件は、裏返せば単調そのものだということでもある。だから、せっかく始めても三日坊主で終わってしまいやすい。今日、ウオーキングをはじめとするエアロビクスの講習会が盛んに行われているが、講習会後の運動習慣の定着率を調べてみると、20〜50%程度だという。
登山はどうだろうか。登山はウオーキングの一種だが、その長所をより大きくし、短所をより小さくした理想的な運動だというのが筆者の意見である。
たとえば、下界でウオーキングをする場合、1日にせいぜい1〜2時間くらいが限度である。これに対して登山は、最低でも2〜3時間は歩くし、泊まりがけの山行ではそれが何日も続く。
しかも、これだけ長い時間歩いても飽きることがない。これはすばらしい長所である。もしも実験室で、トレッドミル(人間の運動用に作られた大型のベルトコンベアー、図2−3、p24参照)を使ってシミュレーション登山をしたら、単調すぎて、一日中続けることなどとてもできないだろう。だが大自然の中で行うと、それが簡単にできてしまうのである。
また平地でウオーキングを行う場合、ぶらぶら歩くのでは運動強度が弱すぎるので、早歩きをするのがよいといわれている。だが、早歩きはせわしなくて好きになれない、という人もいる。
登山の場合は、荷物を背負って坂道を歩くので、ゆっくり歩いたときに、平地での早歩き、ないしはジョギングに相当する運動強度になる。つまり、景色を眺めたり、動物や植物を観察したり、仲間と話をしたり、あるいは一人で考えごとをしたりしながら、ゆっくりと歩いたときに、健康にとって最大の効果があるのである。
また下界、特に市街地で運動をするときには、大気汚染の影響、交通事故の危険、人混みの煩わしさ、といった環境的な短所がついてまわる。だが登山には、このような短所がない。そればかりか、きれいな空気や水を味わったり、森林浴をしたりすることもできるのである。