2009年ザンスカール(インド・ヒマラヤ)遠征
その1

2009年京都ザンスカール遠征隊
 (2009年8月6日〜9月12日)  

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1. はじめに
2. ラダックの中心地レーからザンスカールのパダムへ
3. 知られざるレルー谷の未踏峰探査
4. ザンスカール最深部トレッキング
5. カルギルからパダム迄の山々
6. ザンスカールの石
7. ザンスカールの花



From glacier tongue of left branch, P5817(R29) ,P5962(R31) , P6007(R34) from right

1.はじめに

 2007年初秋にザンスカールのパダムからシンゴ・ラ峠(5095m)を越えて、ダルチャ迄歩いたが、この時レルー谷の奥に聳える魅力的な山々を垣間見て、未知のこの谷に強く心を引きつけられた。広く開けた明るいレルー谷の奥には、きっと知られざる未踏の処女峰が沢山眠っているに違いないと推測した。帰国後、The Alpine JournalやAmericann Alpine Journalで過去の記録を調べてみたが、レルー谷に入った遠征隊の報告文は見あたらなかった。インドのHimalayan Clubの友人のサテイアさんや、重鎮である Harish Kapadia さんにも問い合わせたが、彼等の知る限りでも、レルー谷の遠征記録は見あたらないとのことだった。レルー谷の周辺には、6000m前後の未知の山々が30座以上はあろうと推測され、Harish Kapadia さんからの貴重な情報をいただいた上、2009年夏にザンスカールに出かける具体的な計画を立案した。

 今回の遠征は、「知られざるレルー谷の未踏峰探査」を主目的とし、レルー谷探査に丸8日間の日程を組み入れることにした。そして、レルー谷探査の後に、プルネ(Purune )から プクタル・ゴンパ(Phuktal Gompa),タンタック・ゴンパ (Tantak Gompa)を経て、ザンスカール最深部のシャデー村(Shade)を訪問し、その後ニアロ・コンツエ・ラ峠(Nialo Kontse La 4850m)とゴツンタ・ラ峠(Gotunta La 5100m)を越えて、マナリ - レー間の道路沿いにあるギアン(Gian)迄歩く、静かなザンスカール最深部の12日間のトレッキングで締めくくる計画とした。
 いろいろな事情で参加出来なくなった仲間もいて、最終的なメンバーは、隊長の私阪本公一(69歳、AACK会員)、谷口朗(71歳、AACK会員)、宮川清明(68歳、京都山岳会会員)、岡部光彦(68歳、元京都山岳会)の4名となった。

 ラダックは、インド北西部のジャム・カシミール州に属する同州最大の地方の呼称である。人口が約7000名のザンスカールは、行政上はラダックに組み入れられている。

 この地方の山々は、カラコルム山脈に接するインド・ヒマラヤの北西部にあり、幾つかの小さな山群から成り立っている。中国の国境となっているパンゴン湖の西に小規模なパンゴン山群があり、その西側にラダック山群がある。ラダック山群は、北はカラコムルのサセール・カンリ1峰(7692m) の南からツオ・モリリ湖に至る南北に長い山群である。ザンスカール山群は、このラダック山群の西に位置する。ヌン峰(7135m)やクン峰(7077m)から南のキーラング
(Kyelang)に至るこの山脈は、地図上ではナンガ・パルバット(8126m)につながる Great Himalaya として分類されており、ザンスカール山群とは記載されていない。この Great Himalaya の主稜線の西側は、ヌン峰・クン峰の南のシックル・ムーン(6571m)のあるあたりからの南部は、キシュトワール(Kishtwar)山群と呼称されて鋭鋒が多い。イギリス・イタリア等の欧州人の登山記録が数多く残されていて、殆どの山が欧州的な山名がつけられている。日本人としては、1977年に広島山岳会が難峰のバルナジ2峰(6290m)に初登頂している。

 一方、このGreat Himalayaの東側は、意外と遠征隊が入っておらず、未知の山々が多く、まともな山名もつけれれていない。日本人としても、1980年に北大WVOB隊のZ1峰(6181m)初登頂、1976年の東洋大学隊のドダ峰(6560m)初登頂と1997年の北大山岳部の同峰再登頂、そして1984年の独協大学隊のラハーモ峰(6000m ?)初登頂 ぐらいしか見あたらない。この Great Himlayaの東側は、まだまだ手つかずの未踏峰が数多く残されている山塊である。ラダック山群で数多くの初登頂の実績を残された中京山岳会の沖充人氏が、2008年夏にこのGreat Himalaya の Z3峰周辺の山々を探査され、この山塊の究明に情熱を燃やしておられる。

 ヌン峰・クン峰から南に延びる Great Himalaya の山群には、大きな氷河も発達しており、カラコルム的な男性的鋭鋒が多い。一方、カルギルから、スル谷、ドダ河、ツアラップ河の東にある地図上のザンスカール山群は、大きな氷河は殆どなく、どちらかといえば女性的なやさしい山並みが続いている。ザンスカールの中心地パダムの東にある山群と対比する為、 ヌン峰・クン峰から南に連なる Great Himalaya の東側の山群(西側はKishtwar山群)を、私は「ザンスカール西(Zanskar West)」とあえ呼ぶことにしたい。


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1. はじめに
2. ラダックの中心地レーからザンスカールのパダムへ
3. 知られざるレルー谷の未踏峰探査
4. ザンスカール最深部トレッキング
5. カルギルからパダム迄の山々
6. ザンスカールの石
7. ザンスカールの花